雑記帳

チ。 ―地球の運動について― 第25話

2025-03-16 20:43:02
目次

ラファウ「注視すべきはその好奇心の強さだ 学術の未来において これこそが何より重要な才能だ というのも僕は今恐れているんだ もしかしたら今後 真理は発見されるものではなく作られるもの という見方がある種前提になるかもしれない 過去の書物や異国を見るとそれぞれに違う歴史や文化 信仰がある 今はまだ 情報が少ないけど この先さらに自分たち以外と繋がれば 真理さえ相対的であるとみなされていくだろう そうなれば人の心から絶対不変の心理という理念に対する畏怖や崇拝が薄れていく そして全ての研究活動は専門化して 知の総体に触れたいという 崇高な欲望 つまり好奇心は 馬鹿げた不要なものとして唾棄されるかもしれない そうなるのは何というか僕は 寂しいよ。」

アルベルト「父は言った 疑えと 結果彼は誰も信頼せず 資料を共有しないで殺された 先生は言った 信じろと 結果彼は自らの信念に従って 殺人も厭わなくなった これが知に関わったものの末路です 学問だの真理だのは 人間には荷が重い。」

司祭「肉体と魂 理性と信仰 哲学と神学 疑うことと信じること これらの矛盾は両立します なぜか それが人間だからです 人間は神でも獣でもない その中間に存在する でも だからこそ 矛盾を 曖昧を 混乱を受け入れられる むしろ そこで理性の息継ぎをする 話を聞くにあなたは今 神を失っている つまり この世界が存在するという奇跡を感じられないでいる 奇跡とは必然に満ちた領域で生まれる 偶然のことです と同時に 偶然に満ちた領域で 必然が生まれることです 昔のあなたはそれらを感じていた この世のすべてが奇跡的だと知っていた しかし 経験や記憶 過去や故郷 そして痛みと引き換えに 奇跡まで失ってしまった それこそあなたが生きる場所だったのに です。」

アルベルト「いくら 悩んで問うても 神は口を開かない。」
司祭「そうですよ だから永遠に私たちは考え続けられるのです 私はそれを 幸福だと思いたい。では最後に一つ質問です 硬貨を捧げれば パンを得られる 税を捧げれば 権利を得られる 労働を捧げれば 報酬を得られる なら 一体何を捧げれば この世の全てを知れると思いますか その答えを探してください。」
アルベルト「何のために?」
司祭「この世で再び生きるために。」

アルベルト「僕らは足りない だから補い合える そうじゃなきゃこの世界には挑めない 人間は社会的な動物だ 先生 僕もタウマゼインを感じます それを肯定し続けます あなたとは違ったやり方で 疑いながら進んで 信じながら戻って 美しさに きらめきに 迫り詰めてみせます。」

この記事を書いた人

ろく